ギークもどきの日記帳

雑多な知識が垂れ流される場所。ほとんど無害。

暑さがまだ残る夏の夜、あなたは重い鞄を引きずりながら家に向かって歩いていた。 「今日は散々な一日だった」とあなたは思う。 明日が終われば夏休みだ。それだけが救いだとあなたは感じた。

連日の猛暑でただでさえ不快だというのに、クラスメイトの悪ふざけに巻き込まれて教師にこっぴどく叱られた。 あなたはただ近くにいただけだったが、夏バテした教師にはそれを見抜くだけの判断力が残っていなかった。 あなたにも教師の体調を察する余裕がなく、なぜ自分が叱られたのか分からなかった。

数学の小テストがさっぱり解けなかったのはきっと夏のせいだとあなたは思った。 窓の外でやかましく鳴くセミが気になり、あなたは問題に集中できなかった。 そもそも明後日から夏休みなのに小テストをするのが間違っている。 あなたは心のなかでそう愚痴った。

放課後、あなたはいつもどおり部活動に向かった。 クーラーの効いた図書室には誰も居ない。 他の部員はまっすぐ帰ったのだろう、とあなたは考える。 数分後、後輩が一人やってきた。 あなた達は短く他愛もない世間話を交わす。

あなたは日が暮れて涼しくなるのを待った。 静かな時が流れた。 あなたにとってその時間は今日一日で唯一有意義なひとときだった。

帰路の半分に達したころ、後ろから花火の音がした。 あなたは振り返ったが、花火は山に隠れて見えない。 あなたはここ数年打ち上げ花火を見ていないことに気づく。 数歩歩いて、部活にほとんど誰も来なかった理由も思い当たった。 夏祭りにしては少し早いな、とあなたは呟いた。

暑さがまだ残る夏の夜、あなたは重い鞄を引きずりながら家に向かって歩いていた。 「今日は悪くない一日だ」とあなたは思う。 明後日からが夏休みだ。それだけがあなたにとって救いだった。