ギークもどきの日記帳

雑多な知識が垂れ流される場所。ほとんど無害。

いつのまにか二十歳になっていた。 日曜の朝に起きるのは難しくなったが、代わりにテレビの録画は簡単になった。 昼過ぎに目を覚まし、アイスコーヒーを飲みながら予約録画した仮面ライダーを観る。 画面の向こうで戦ってるのは10年前の劇場版限定ライダーだ。ヒーローのくせに勇気が無くて、変身するたびにパンツを見て勇気を振り絞る変わった仮面ライダー。 その映画をちゃんと観たことはない。あらすじはネットで調べて、Amazonプライムビデオで飛ばし飛ばしに眺めた。

ずっと仮面ライダーを観続けてきた。でも、一つのシリーズを全話通して観たことは一度もない。 毎年いくらか見逃す。家のテレビに録画機能が付いてもそれは変わらなかった。 毎週観るほどの熱意はなく、習慣づくこともない。 だけど途切れ途切れに観続けた。各話のあらすじは公式サイトに書いてあるから、話に追いつけなくなることはない。

驚くべきことに、仮面ライダージオウは毎週欠かさず観ている。平成仮面ライダー最終作と銘打たれたジオウには、歴代の平成仮面ライダーが毎回出てくる。 タイムマシンに乗って歴史を変えるジオウを観ながら、記憶の中をタイムトラベルしている。 親戚の子どもと鎧武の話で盛り上がった大晦日。2回も観に行ったディケイドの冬映画。 ラウズカードをすべて揃えたクリスマス。初めて変身ベルトを腰に巻いた日。

初めて観た仮面ライダーファイズだった。灰色の怪人は死から蘇った人間で、仲間を増やすために人間を殺す。 ファイズに変身する乾巧に憧れた。ぶっきらぼうなひねくれ者だけど、誰かのために身を投げ出せる勇気を持った青年だった。 乾巧には夢が無かった。彼は誰かの夢を守るために死と戦った。最後に彼は自分の夢を見つける。 僕もいつか夢を見つけるんだろうか。そう思いながら観ていた。

ジオウに変身する常磐ソウゴには王様になるという夢があるらしい。彼は夢を叶えるだろう。それだけの意志と力を感じる。 乾巧も最終回で自分の夢を語った。「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいにみんなが幸せになりますように」 そう言って暖かな昼下がりの土手で眠りにつく。それがただの昼寝なのか、二度目の死なのかは分からない。 少なくとも、その夢はいつか叶うと思う。

いつのまにか二十歳になった人生に嫌気がさして、元気をすっかり無くしてしまった。 本当に嫌になったわけじゃない。ただ少し疲れたから、横になって昼寝したいだけだ。 結局、夢はまだ見つかっていない。夢を守る勇気も出そうにない。

仮面ライダーにはなれなかった。もしも本物の変身ベルトを手にしたら、たぶん悪の怪人になってしまうだろう。 幸いこの世界に変身ベルトはない。仮面ライダーにも怪人にもなれないなら、夢も勇気もなくったって人を殺すことはないだろう。

時々、勇気を振り絞る夢を見る。いつかそれを正夢にするのが夢なのかもしれない。 それが叶う日まで、仮面ライダーを観続ける。途切れ途切れに。たぶん。